東方紫香花 〜 Seasonal Dream Vision.
『東方紫香花 〜 Seasonal Dream Vision.』(とうほうしこうばな 〜 シーゾナル ドリーム ビジョン)は、2005年9月に株式会社虎の穴から刊行された同人誌。東方Projectのアンソロジーである。
概要[編集]
本作品は東方Projectのアンソロジーとして刊行されたものである。内容としては、複数人の東方Projectの同人作家によるアンソロジー集とアレンジ音楽CDが主となっている。またZUNの書き下ろし小説も掲載されている。ZUNが「四季と花」というテーマを設定し、「漫画パートでは、一話ごとに一つの花」「音楽パートは一年をテーマに、一曲に付き一月」「パッケージは、一面につき一つの季節」などとなっている。カバーイラストは森井しづきが担当。
始めは虎の穴の商業誌からという話がZUNに持ち込まれたが、「商業誌ではお決まりのアンソロジーしかできないと言う話。それではつまらないでしょう。同人の繋がりが一番強い虎さんが、何で同人で攻めないの」という経緯により同人誌として刊行された。そのため一般流通ではなくコミックとらのあなでのみの販売となった。
タイトルの『東方紫香花』は『東方花映塚』の裏の名前として付けられた。
内容[編集]
アンソロジーパート[編集]
同人作家が作成したアンソロジーコミックが掲載されている。アンソロジーであるため、二次設定が使われているものも見受けられる。全180ページ。何かの花をテーマとして選んで描くという条件がZUNより指定された[1]。
- 桜〜願わくは〜 - D・さとPON
- 白詰草と約束 - 葉庭
- 東方皐月花〜ホトトギス〜 - SINRA
- 青い薔薇の育て方 - 氷川翔
- 月見草-ジユウナココロ- - 榎宮祐
- 〜吾も亦た紅なり〜 - 雨水
- スノードロップ〜冬の贈り物〜 - 綾見ちは
- 春うららかに桜吹雪と美少女ひとり - 夢里まくら
- ローズマリーにじかんがもどる - Katzeh
- 深紅のアネモネ - やむっ
- 幾千幾万一夜華 - 如月亮
- 翠嵐吹華 - 鳴海柚来
- 永遠ノ秋桜 - 比良坂真琴
- 秋の中に桜を見る - うりうり
- 福寿草 - 氷雨げんた
- 桜花放心 - 里村響
六十年ぶりに紫に香る花[編集]
アンソロジーの最後に収録されているZUN書き下ろしの小説。『東方花映塚』のExtraモード最終面直前の話となっている。
- あらすじ
- 六十年ぶりに花が咲き乱れる異変が起きた。記憶は六十年で死に、歴史だけが残る。八雲紫は、六十年に一度花が咲き乱れるのは何故か皆が分かるかどうか幻想郷の人間達に問いかけをしてゆく。しかし無縁塚の紫の桜の前で、逆に博麗霊夢から問いかけられてしまい…。
アレンジCD[編集]
計13曲が収録されている。1曲目から12曲目までは12組のアレンジャーが1曲ずつアレンジしており、最後の13曲目はZUNが作曲・編曲した物。4月から3月までのテーマとなる月、アレンジ曲の曲名、原曲の選曲は全てZUNの指定となっている[1]。
- 卯月の正月(原曲:竹取飛翔 〜 Lunatic Princess) - S.S.H(埼玉最終兵器)
- 五月魔人形(原曲:ヴワル魔法図書館) - にょ(ひえろぐりふ)
- 本物の雨を見抜け(原曲:夢想時空) - 岸田(岸田教団)
- 全ては織姫の為に(原曲:千年幻想郷 〜 History of the Moon) - 山西利治&なみへい(有限会社ファクトリー・ノイズ&AG&StudioA')
- 幻想の夏、妖怪の夏(原曲:東方封魔録 〜 幽幻乱舞) - ESTi(Studio SIS)
- 彼岸街道(原曲:天空の花の都) - setzer(MintJam)
- 蓬莱の冠雪に何を思うか(原曲:Strawberry Crisis!!) - 矢鴇つかさ(Sound Online)
- 11月の雨(モチーフ:メインテーマ) - 下田祐(Fragile Online)
- 過ぎ去る年は柔らかい幻想を運ぶ(原曲:アリスマエステラ) - ビートまりお(COOL&CREATE)
- 幻想元旦(原曲:東方妖々夢 〜 Ancient Temple) - 椎名治美(有限会社ファクトリー・ノイズ&AG)
- 八方恵方大胆無敵(原曲:御伽の国の鬼が島 〜 Missing Power) - どぶウサギ(dBu music)
- 幻想の桜、三月の紫色(原曲:乙女戦士 〜 Heart of Valkyrie) - 九十九百太郎(有限会社ファクトリー・ノイズ&AG)
- 六十年目の東方裁判 - ZUN(上海アリス幻樂団)
評価と反応、話題[編集]
ZUNの書き下ろし小説は、同時期に頒布された『東方花映塚』を背景としたものであり、公式的な内容であるため反応は大きかった。また、コミック、アレンジの参加者達はいずれも東方Projectの二次創作では名を知られる面々であったことも話題となった。
一方で、アレンジCD参加者の一人であるsetzer氏がライナーノーツ上で「…実は東方ってやったことないんですよね(笑)[原文ママ]」という発言を行った。この件に関して、「原作者のZUNが参加しているファンブックであるのに、このような発言を行うのは(その口調も含め)不適切である」と非難が集中した。続く部分で「シューティング初心者な自分が、弾幕系シューティングである東方Projectをどこまでプレイ出来るか、機会があったらチャレンジしたい」旨の発言があるものの、当該参加者は紫香花発表の1年以上前から東方楽曲の編曲による同人活動を行っていたこともあり、「原作に興味も無いのにその二次創作を行っていたとは」とファンの非難意見に拍車をかけた。
本作品は株式会社である虎の穴が参加者を集めて作成したもので、選考基準も先述の通り「東方の二次創作で名前を知られていた面々」であった為、著名であったり、単純な「仕事」であれば当該参加者の参加はほぼ無かったものであると考えられる。当該参加者は自身のサイトで「読者を不快にさせたこと」のみに対し謝罪文を出したが、虎の穴からは一切のアナウンスは無い。当時から東方ファンの間で、東方楽曲のアレンジを行う二次編曲者の一部に対し、「原作・原作の音楽に触れたから、などではなく、ただ流行りを利用して金を稼ぎたいだけではないのか」という反感があり、この発言がそういった二次編曲者達への不信感へ、火に油を注ぐようなものであるという見方も強い。それまでオリジナル音楽創作系やゲーム音楽とは縁が一切無かったサークルの数々が急に東方楽曲のアレンジによる編曲活動を行うようになったという背景もこれを後押しした。
本騒動は「自らの知名度、売り上げを上げる事を重視した同人活動が純粋なファンコミュニティを踏みにじる」、「ファンをないがしろにし営利目的に走った同人ショップの企画」といった近年の同人事情の負の部分が表面化したものとして一部で注視されている。
発売から3年後の2008年9月に再版された際、ライナーノーツ内の当該発言部分は削除された。ただし、当該参加者のアレンジ曲は依然残されたままであり、発刊元の虎の穴も本騒動や削除理由についてアナウンスはしていない。
以降の展開[編集]
『紫香花』の後に頒布された「株式会社虎の穴」による東方Project関連の同人誌や同人CDなどは、他の一般的な同人サークルと同様の二次創作物扱いであり、ZUNは参加しておらず、ZUNとの直接的な関連もない。
虎の穴が運営しているウェブコミック配信サイト「コミックHOLIC」には、東方Project関連コンテンツとして「東方絵空事」が存在しているが、こちらについてもZUNとの直接的な関連は無い。