怪人ヒイロ
『怪人ヒイロ』(ミラクルヒイロ)は、どおくまんによるスポーツ漫画。
概要[編集]
『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、1985年4・5合併号から1988年9号まで連載された。紙の単行本は既刊19巻で未完、電子書籍版は全20巻(下記、#単行本最終巻のエピソード参照)
1984年ロサンゼルスオリンピックでの陸上競技における日本人選手の戦績は、男子マラソンで宗猛が4位となったのが最高、メダル獲得はゼロであった。テレビでオリンピック競技を見ていたどおくまんは大いに憤り、日本人が陸上競技で活躍する本作の執筆に至った。
あらすじ[編集]
大阪のイマイ食品陸上部でコーチを務めている山田一夫は、目をかけていた選手が「陸上で日本人は勝てない」と引退したことをきっかけに北海道の大雪山に登り、その帰路に遭難。江戸時代より続く忍者の隠れ里(後に「大雪隠れ里」と命名される)に救われる。里の住人は老人ばかりであったが、類まれなる身体能力を持っていた。山田はスパイクシューズ、クラウチングスタート(スターティングブロックは無いので穴を掘る)などの技術を駆使し、100メートル競走でヒイロに辛勝する(ヒイロがスタート位置を10メートル下げていたことも理由)。
ヒイロと美里を大阪に連れ帰った山田であったが、熱心に練習に取り組む美里に対し、ヒイロは練習もせずに遊び歩く日々。筋肉は落ち、無駄な脂肪も増え、初の公式大会の400メートル走では負けこそしなかったものの、同タイム同率1位に終わる。そのころ、日本陸上界には100メートル走日本記録を更新する火走兆治、熊野隆文といった逸材が突如として現れる。
日本大会で複数種目で日本記録を更新して優勝したヒイロと美里は、神戸市で開催される八か国対抗の世界陸上大会にも出場。ヒイロと美里の活躍に火走、熊野ら他の日本人選手も奮起し、好記録を残す。ヒイロは三段跳びで右足を負傷するも、世界記録を更新し複数種目で優勝。日本を総合優勝に導く。
プロ野球編のあらすじ[編集]
ヒイロの活躍を競技場で見ていた1人の男。彼こそが「ミスタープロ野球」ナガシマであった。連敗中の読買ジャイアンツの救世主とすべく、契約金2億円でヒイロの関心を買って、入団させる。しかし、外野の壁をへこませるような直撃弾ファールを打ったことがあるものの、打席に立てば三振、守備につけば連続エラーで日本ワースト記録を更新してしまったヒイロは、ついに二軍落ちとなる。飲み屋で遊んでいたヒイロはヤクザと揉め、ヤクザを半殺しにするも自身も刺されて全治3週間の怪我を負い、入院となる。
入院先にはヒイロの熱烈的なファンの少年がいた。陸上で活躍したヒイロが野球ではてんでダメな姿を見せるのに強く抗議をする。成功率30%の手術を待つ少年にヒイロはヒームランを約し、ナガシマと伊豆の山中にて特訓を行う。以降、復調したヒイロはホームランを連発し、ジャイアンツは最下位を脱する。なお、少年の手術も成功に終わる。
ヒイロ対策として全打席敬遠が取られるようになり、ジャイアンツの快進撃も足踏み状態。ジャイアンツOBカネダはヒイロを投手に転向させ、残る30試合の全てに先発させる、敬遠を含めて出塁したヒイロを得点につなげるためナガシマとオウ監督の現役復帰という奇策を出した。
立ちふさがるは、首位の拾島カープ。数々のヒイロ対策を施し、ジャイアンツを苦しめる。連投や2人合わせて100歳のナガシマ、オウらがドクターストップがかかってもなお、猛練習と試合出場を繰り返すのに発奮した他のジャイアンツ選手の力もあり、ジャイアンツはリーグ優勝を果たす。
驚異のカボチャマン編のあらすじ[編集]
日本シリーズも制し、日本一になった読買ジャイアンツ。祝勝会の会場から「しばらく旅に出る」と置き手紙を残してヒイロは消えた。
ソウルオリンピックの選考会を兼ねる福岡マラソン大会が開催され、強豪日本選手に混じり、カボチャのマスクを被り、マントを付けた一般参加者がいた。カボチャ男、序盤は先頭を走り、観客にアピールしたり阿波踊りを踊りつつ走ったり。中盤は先頭から1kmほど下がるも、終盤になって再び先頭へ。このテレビ中継を見ていた山田は、カボチャ男の正体がヒイロだと考えた。
その後、優勝した横綱を相手に勝ち、フルコンタクト空手の大会でも優勝したカボチャ男は記者会見を開き、自分の目的がヒイロとの対戦だと明かした。
ヒイロは渡米しており、ボクシングのヘビー級世界チャンピオンとのエキジビジョンマッチに出場し、勝利した。
日本へ戻ったヒイロにカボチャ男は阿蘇山特設会場での5種目勝負をヒイロに持ち掛けた。
一戦目は、鎧を着て馬に騎乗し、長槍やランスで戦うというもの。二戦目は岩場でのノックアウト式の柔術対決。どちらもヒイロが勝利するも、両者ともに重傷を負う。続く、三戦、四戦目はヒイロの意識が回復せず、試合会場に現れたカボチャ男の不戦勝となった。
最終第五戦はトライアスロン。マスクを取ったカボチャ男だったが、3つ子であり水泳(急流を泳いで登る)終盤で入れ替わっていた。山岳道路を走る自転車競技も入れ替わる予定であったが、日本のマスコミが張り付いたために入れ替わりを断念し、続くフルマラソンにも続いて出場することになった。カボチャ男に遅れていたヒイロだったが、自転車とマラソンの両方をやることになったカボチャ男についに追いつく。ゴール間近で倒れ込んだカボチャ男に手と肩を貸し、並んで同時ゴールしようとしたヒイロのスポーツマンシップ精神に、カボチャ男は辞退し、ヒイロの逆転勝利となった。
驚異のオリンピック編のあらすじ[編集]
重傷を負いつつカボチャマンと対戦したヒイロは入院し、左手以外は動かせないような状態。数年かけてリハビリすれば軽い運動はできるようになるとの診断だった。
リュウ江口が手配したアメリカの医者はヒイロ復帰は不可能ではないと診断し、成功率10%程度の手術を勧め、ヒイロは手術を承諾する。病室を埋め尽くすヒイロのファンたちからの見舞い品や激励のメッセージを前に、ヒイロは金銭のためではなく、応援してくれるファンのためにオリンピックで勝利することを誓う。
手術は成功し、ヒイロは驚異的な体力で1か月して自力歩行の可能となり、日本へ帰国。沖縄県でリハビリとオリンピックに向けてのキャンプに入った。ヒイロの練習が公開されたが、リハビリのための水泳は小学生にも劣る記録、陸上競技各種はシニア大会の記録並みであった。落胆する記者たちであったが、山田とヒイロ自身は徐々に体力が戻っていることを実感していた。
陸連名誉会長と水連会長はヒイロに期待し、ぎりぎりまで選考競技会を遅らせた。これにより、ヒイロは水陸合わせて、34種目で優勝(日本記録更新多数)し、文句なしでソウルオリンピックの日本代表選手となる。日本新を記録したヒイロであったが、そのタイムは世界レベルでは予選落ちでもあって危ぶまれる点もあったが、これもまたヒイロと山田の計画通りであった。
ソウルオリンピックが開催され、ヒイロはエントリーした水泳全てで金メダルを獲得。陸上においても、金メダルを獲得。100メートルでルイス、ジョンソンを破る9秒56という超絶した記録を残して勝利する。
登場人物[編集]
- ヒイロ
- タイトルロール。
- 大雪隠れ里で生まれ育った忍者の男性。常人ばなれした身体能力を持つ里の人々の中でも格別に身体能力が高く、里での大会では様々なハンデ(高跳びの場合「蛙の真似をして助走無しで跳ぶ」など)を負ってなお、優勝する。
- この身体能力を山田に買われ、美里ともどもイマイ食品の陸上部に入団するが、自身の肉体への過信もあって、練習嫌い。そのため、長らくクラウチングスタートも覚えずスタンディングスタートだった。
- 身体能力が高いが、体力が無尽蔵にあるというわけでもなく、イマイ食品の陸上部員との100、400、2000、4000メートルの変則リレー対決(ヒイロは6500メートルを単独走)では、トトカルチョのため前半ゆっくり、後半を世界記録以上のハイペースで走ったことで、終盤にスタミナ切れを起こしている。
- 最初の公式戦では複数種目に出場すると、有力選手に八百長を持ち掛け、競技中(走行中)にすら金額交渉を行っていたが、いずれも取引が成立せず、ヒイロの優勝に終わっている(記録は凡庸な値)。
- 日本大会では10種目にエントリーするが、100メートル予選で3位を喫し(1位は熊野)、2種目を欠場し、クラウチングスタート修得。8種目で日本新記録を出して優勝する。世界大会は「優勝したら賞金」ということでその額の大きい種目に出場し、世界記録を持つ強豪たちを相手に記録更新と優勝を果たす。
- 山田 一夫(やまだ かずお)
- 男子100メートル走で、オリンピック出場経験もあり、日本記録を残したこともある。選手引退後はイマイ食品の陸上部でコーチをしていた。
- 美里(みさと)
- 大雪隠れ里で生まれ育った女性。こちらも身体能力に優れ、山田に身体能力を買われてヒイロともどもイマイ食品の陸上部へ入団する。
- ヒイロと違い、練習にも熱心に取り組みイマイ食品の女子陸上部の面々との仲も良好。最初の公式大会までにクラウチングスタートを習得し、複数の種目に出場して、日本新記録を連発し勝利した。日本大会でも出場した3種目で日本記録を更新して優勝する。世界大会では100メートルのみ3位(自己記録の日本記録は更新)に終わるが、他は世界記録も更新して優勝する。
- 鉄兵衛(てつべえ)
- 大雪隠れ里の老人男性(数年前の流行り病で、里の若者はヒイロと美里を残して死亡し、老人ばかりである)。
- ヒイロと美里がイマイ食品陸上部に入団するにあたって、二人の監視役として同行し、寝起きを共にする。が、主にヒイロと共に遊び歩いている。
- プロ野球編でもヒイロに付き従って上京し、飲み歩いている。
- カボチャマン編では、ヒイロの出場を止めようとする山田と美里を金目当てで縛り上げていた。
- 火走 兆治(ひばしり ちょうじ)
- 無名であったが、初出場の大会で100メートル走日本新記録を更新した男子高校1年生。日本選手権でヒイロのライバルとなる。
- 日本大会では100メートルの自己記録を更新するも、ヒイロに敗れる。ソウルオリンピックの選考大会でも100メートルで自己記録を更新したがヒイロに敗れる。
- 父親はホテルを経営しており、火走の住居や高校の陸上部トレーニング場もホテル上層階にある。
- オリンピック編では、100メートル決勝に進出。
- 熊野 隆文(くまの たかふみ)
- 火走とは別大会であるが、100メートル走において日本新記録(火走と同タイム)を出した男子高校1年生。日本選手権でヒイロのライバルとなる。
- 日本大会では100メートル予選でヒイロに勝つ。100メートル決勝では自己記録を更新するも、ヒイロに敗れる。ソウルオリンピックの選考大会でも100メートルで自己記録を更新したがヒイロに敗れる。スタートダッシュに定評がある。
- オリンピック編では100メートル予選にてスタードダッシュでジョンソンに敗れたショックで敗退。
プロ野球編の登場人物[編集]
セ・リーグには、読買ジャイアンツ(
連載当時の実在選手が多数、カタカナ名で登場する。
- ヒイロ
- オリンピック出場があるため、イマイ食品、日本陸上業界ともに猛反対をしていたが、契約金2億円を提示されて、ヒイロ自身が乗り気になる。
- 背番号はナガシマの永久欠番でもある「3」。
- 投手としては170km/h超の超速球を投げる。ただし、「30試合連続先発」を果たすため、1試合に数球しか170km/h超は投げない。拾島打線が170km/hを攻略した際には最速210km/hを投げた。
- 打順は当初4番であったが、投手になってからは1番打者。走塁も当初は技術が無かったが、練習の末に二盗、三盗を連発。ときにはホームスチールも行えるレベルになる。
- ナガシマ シゲオ
- 「ミスタープロ野球」
- 30連勝による今シーズン奇跡の逆転優勝のために現役復帰する。復帰後は2番打者、三塁手。
- オリンピック編では、解説者として報道席に座る。
- オウ サダハル
- 読買ジャイアンツの監督。「チョーさん」と呼ぶナガシマの意向には逆らえないでいる。
- 30連勝による今シーズン奇跡の逆転優勝のために現役復帰する。復帰後は3番打者、一塁手。
- 小力(しょうりき)
- 読買ジャイアンツのオーナー。
- カネダ ショーイチ
- 元拒人軍投手で、野球解説者。ナガシマ、オウとも旧知の仲。
- 今シーズン奇跡の逆転優勝(30連勝)のため、ヒイロの投手転向、30試合連続先発、ナガシマとオウの現役復帰の秘策を授ける。ナガシマ、オウの復帰は、現状の拒人軍打線ではせっかくのヒイロ1番を得点に結びつけられないため。
- なお、30試合連続出場のための体力温存策として、ヒイロは5回まで投げてライトに。ナガシマとオウは1打席で(得点を挙げた後に)交代。
- また、投手に転向したヒイロにカーブ、スプリットフィンガード・ファストボールなどの変化球を教え込んだ。
- アナン
- 拾島カープ監督。洞察力に優れ、ヒイロの全打席敬遠や、ナガシマ、オウも含めての敬遠満塁策、ヒイロ連投の体力温存を見抜き、超速球を捨て半速球を狙い打つ二軍選手打線、一軍選手に170km/h超の打撃練習をほどこすなど、数々の策で拒人軍の連勝を止め、ヒイロから安打を奪うなど、苦しめる。
驚異のカボチャマン編の登場人物[編集]
- カボチャマン
- その正体は、ソビエト連邦選りすぐりのアスリート10人。そのうち3人は顔出し向けの三つ子である。
- 清原と対戦したテコンドーの達人とヒイロと対戦した2人はソビエト大使館お抱えの病院に搬送され、命こそはつないだものの再起不能とされている。
- リュウ・江川(リュウ・えがわ)
- アメリカ在住の大手プロダクション社長。
- ラスベガスで借金返済のために給仕をするヒイロを見出し、ボクシングのエキジビジョンマッチを仕組んだ。カボチャマンとの対戦も会場設営を行ったり、プロデュースを行う。なお、種目についてはカボチャマン側からの提案である。
- 万代の富士(まよのふじ)
- 横綱。カボチャマンには敗れたものの、阿蘇山にかけつけ、ヒイロへの輸血用血液を提供する(B型)。
- 清原(きよはら)
- 日本屈指のフルコンタクト空手の猛者。決勝に進出するもカボチャマンの試合を見て意気消沈。協会の勧めで鉄板を仕込んだ膝蹴りでカボチャマンに流血を伴う重傷を負わせたものの、敗れる。阿蘇山にかけつけ、ヒイロへの輸血用血液を提供する(B型)。
単行本最終巻のエピソード[編集]
本節の出典[1]。
単行本は19巻まで発売されたが、最終話が収録される20巻は発売されなかった。後に電子書籍版が発売された際に、20巻が刊行されている。
連載終了にあたり、どおくまんは連載終了3か月前に『週刊少年チャンピオン』担当編集に単行本最終巻に最終話が収録されるように、間違いなく計算してくれるよう依頼をした。どおくまんとしては担当編集からの回答通りに執筆ページ数を合わせて最終回を迎えた。しかしながら、実際には20巻分の原稿は200ページほどであり、単行本にするにはまったく足りていなかった。当時の編集長は読み切りで続編を描けばすぐに単行本が出るとの判断を下したが、どおくまんは続編を描くことはなかった。
電子書籍版の刊行の話が持ち上がった際にも、この未収録分の漫画原稿がどおくまんの手元には無かった。『週刊少年チャンピオン』編集部内にあると思われたが、当時の編集者たちはほとんど退職しており、伝手も無いような状況だった。その年にどおくまんの漫画『暴力大将』を担当し、後に『週刊少年チャンピオン』編集長にもなった人物から年賀状が届いており、電話でコンタクトをとったところ、快諾し、秋田書店の倉庫に眠っていた原稿を手にすることになった。
脚注[編集]
- ↑ どおくまん (2011年7月21日). “どおくまんが語る幻の「ミラクル怪人ヒイロ」の生原稿発見秘話”. どおくまん少年誌用blog. 2025年11月8日確認。