夜逃げ

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夜逃げとは主として闇金等から借りた多額の借金で首が回らなくなった(概ね多重)債務者が債権者(債務者側からしてみれば債鬼)の苛烈な取り立てから逃れるためにやむを得ず(借金取りが追跡を諦めるぐらいの)遠隔地に逃亡する事である。

概要[編集]

日本の破産法によれば事業の失敗や経済的破綻など「真っ当な」理由により債務超過に陥った債務者は自己破産及びそれに付随する免責によって債務を帳消しにしてもらいゼロからの再スタートを切る事ができる。

しかし理由が「真っ当でない」、即ち賭博や遊興の為に分不相応な借金を作りそれが弁済できなくて首が回らなくなったような債務者に対しては債務の免責は適用されない。

しかもそのような不真面目な債務者は大抵非合法な闇金融に手を出している場合が多いから返済できなきゃ勿論タダでは済まない。蛸部屋で強制労働なんざ朝飯前、下手すりゃ生命まで奪われかねない。そんな時、このような債務者にとって窮余の一策最期の最後の手段と言えるのが所謂夜逃げという訳である。

「夜逃げ」と呼ばれてはいるがその逃亡劇は必ずしも夜間だけに決行されるとは限らない。寧ろ夜中にコソコソ怯えながら逃げるより単なる引越しを装って(可能な限り早めに)計画的に白昼堂々と実行した方が却って債権者に怪しまれずに済む場合もある。

事実は小説よりも奇なりとは言うが夜逃げを決行したその日から債務者にとっては今まで体験した事の無い未知なる非日常が幕を開ける事になる。この夜逃げなる選択が吉と出るか凶と出るかは当事者次第かも知れないが、後述するように前途多難な茨の道である事は間違いないであろう。

夜逃げのメリット・デメリット[編集]

前述したように夜逃げには種々の(決して小さくない)困難が伴う。どちらが大きいかは当事者の置かれた状況により一概には言えないが、一般的にはデメリットの方が大きいと思われる。幾つか列挙しておこう。

メリット[編集]

  • (1)債鬼の魔手(?)から逃れられる

遠く離れた異郷の地(=他道府県)に我が身を移す訳であるから債権者に捕らえられて蛸部屋に放り込まれたり人身or臓器売買されたりする確率は大きく下がる。「奴隷かか!」っちゅー究極の極限状態に陥りたくない人にとっては大きなメリットである。取り敢えず「リアルカイジ」にだけにはなりたくないという債務者にはお勧めの作戦だと言えよう。

  • (2)新天地で新たな人生が謳歌できる(かも)

夜逃げすれば債権者達から逃れられるだけでなく積もり積もったしがらみや嫌な人間達との腐れ縁からも解放されて心機一転新たな気持ちで人生が再スタートできると言えなくもない。その意味で少なくとも曇った自身の心ぐらいは晴れるかも知れない。また夜逃げ先となる地は大概ド田舎自然豊かで空気も美味しい所が多い(と思われる)ので、その点でも心が荒廃し悲嘆に暮れる債務者にとってはメリットと言えるのではなかろうか(借金から足は洗えてないが心は幾分洗われる)。

デメリット[編集]

  • (1)今日から晴れて住所不定無職☆

住民票も何も変えず他所の道府県に「引っ越し」する訳だから当然夜逃げしたその日から債務者は住処も仕事も失う事になる。住所不定無職の代償は大きく夜逃げ先でまともな堅気の仕事に就く事はまず不可能である。従って必然的にヤクザ系の土建屋とかで住み込みで不法就労、という形でしか働く事ができない。また当然ながら種々の行政サービスも全く受けられない。

爆弾テロリスト桐島聡が逃亡先の神奈川県で(当然ながら)健康保険証が貰えず歯科医療が満足に受けられなくて晩年は歯無しの状態であったのは有名な話である。

  • (2)もう敵しか居ないんだ(大袈裟?)

前述のメリット(2)と表裏一体の短所かも知れないが夜逃げ先に身内・親戚、友人・知人など誰一人いない(一緒に夜逃げした家族は除く)。従って頼れる宛は何一つ無くお上(役所)ですら(一部のケースを除き)助けてはくれない。上述の住み込みで働ける場合などはまだ良い方で最悪ホームレスのような状態に陥る事も覚悟せねばならない。 自家用車で夜逃げした人ならしばらくの間は車中泊で雨風が凌げるだろうが免許の更新も不可能であるからやがては無免許運転で摘発され犯罪者となり獄中生活を余儀無くされる可能性がある。(尤も夜逃げ生活の惨状を考えたら刑務所暮らしの方がマシとゆー意見もあるだろうが…)

原始生活というと言い過ぎかも知れないが夜逃げした債務者の末路には過酷なサバイバル生活が待ち受けているという事をある程度は覚悟せねばならないだろう。

  • (3)夜逃げしても借金は無くならない

民法で借金の時効は10年とされているが債権者が中断訴訟を起こせば時効の発動は何年でも先延ばしにできるから「夜逃げして僻地で10年以上潜伏していれば借金が踏み倒せて一安心♪」などと思ってたら大間違いである。そう簡単に債務の地獄からは逃れられない。しかもこれは飽くまで正規の金融業者などが債権者である場合の話であって闇金などの反社連中にはそもそも法律など微塵も通用しない。そんな闇の世界の住人から己が身を守るには残念ながら引き続き悲惨な夜逃げ生活を続けてゆくより他ない。

夜逃げの候補地[編集]

目立つのを避けるためにも夜逃げに適した場所はやはり人里離れた陸の孤島と言えるだろうがこれには異論も存在する。逆に人口過密で騒がしい所の方が人ごみに紛れる事ができて債権者に見つかりにくいと考える向きもあるからである。確かに都内在住の債務者が東京の別の区に逃げたりするのは全くのナンセンスであるが関東圏と距離を置いて東京と同じくそこそこ都会である大阪京都に夜逃げするのは場合によっては有りかも知れない。都会の喧騒から逃れたいとゆー人にはおすすめできないが…。

ところで話は変わるが、青木雄二原作の金融漫画『ナニワ金融道』では登場人物の債務者の夜逃げ先が何故か北海道宮崎県である事が多い。

“試される大地”北海道が夜逃げの候補地として相応しい場所だってのは何となく納得できるんだけど[1]、宮崎県もその候補の1つだとゆーのは(筆者にとって)意外だった。恐らく宮崎も(北海道に負けないぐらい)非常に自然が豊かでのどかな環境の県なのであろう。機会があれば是非とも夜逃げって形じゃなくて観光旅行とゆー形で行ってみたい所である。

脚注[編集]

  1. 寧ろ債鬼よりの方が怖いかも知れない…(あかんやん!)