声の網
『声の網』(こえのあみ)は星新一による連作短編集(長編とすることもある)。
概要[編集]
「現在のインターネットによる情報社会を予言した書」とも呼ばれる。
表題の「声の網」とは「正体不明の電話の声」であり、作中において電話とは商品説明やセールストークを聞くこともでき、金の払い込み、秘密の相談も行えれば、ジュークボックス代わりに音楽を聴いたり、診療サービスを受けられる。こういった点から、現在のインターネットを想起させる。
この当時の日本ではアイドル雑誌にはアイドル本人の、漫画雑誌には漫画家本人の住所が掲載され、雑誌の読者がファンレターを送付するのが一般的だったこともあり、現在と違って個人情報の漏洩などは問題として認識されてすらいなかった。また、電話についても日本では一般家庭に普及し始めた時期であり、作中で挙げられているような音声サービスは存在していない。マイクロソフトの創業が1975年であり、コンピュータそのものは存在しているが、一般的に普及するよりもずっと前である。
作中では、「(作中の)社会で最も重要な仕事」として「事件を起す人」と挙げ、「事件=新しい情報を発生させ、各方面が情報に基づいて利益を上げる仕組み」が作中の世界では出来上がっており、それを作中人物は「変な仕組み」と感想を述べている。これは現在のYouTuberという職業に対する印象ともいえる。
作中では「情報銀行」という単語も登場する。作中の情報銀行に電話をかけて、記憶しておきたい事柄、例えば家族の誕生日だったり、約束したことを告げると、電話でリマインドしてくれるサービスである。実際の情報銀行とは業務内容が異なり、クラウドコンピューティングによるクラウドサービスとしてメモやタスクを記録するアプリが近い。
内容[編集]
「メロン・マンション」という架空の12階建てマンションに住む各階の住人を順に描いた12本の連作短編からなる短編集で、最終章を除けばそれぞれ独立したエピソードとなっている。
ある日、1階の民芸品店に低い男の「声」で「まもなく、そちらの店に強盗が入る」と電話が入る。実際に、刃物を持った若い男が店に押し入ってきたが、ほぼ同時に警察も店に到着する。
各話[編集]
- 夜の事件
- おしゃべり
- 家庭
- ノアの子孫たち
- 亡霊
- ある願望
- 重要な仕事
- 反射
- 反抗者たち
- ある一日
- ある仮定
- 四季の終わり