単為生殖

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単為生殖(たんいせいしょく)とは、一般にはが単独で子を作ることを指す。 また、卵子精子受精することなく、新個体が発生することを単為発生(たんいはっせい)と呼ぶ。


概論[編集]

正確に言えば、単為生殖とは、本来は接合によって新しい個体を生ずるはずの生殖細胞が、接合を経ることなく新しい個体を形成することである。たとえば、と言われるのは、精子が入って受精が行われることで発生が始まり、新たな個体へと成長するものである。ところが、卵が受精を経ずに発生を始める例があり、このようなものを単為生殖と呼ぶのである。つまり、有性生殖器官を強引に無性生殖的に用いてしまうわけである。なお、この卵の例のように、新個体の形成に発生の過程が入ることから、単為発生という言葉も使われる。

卵でなくても、植物では受粉せずに種子が生じる場合(内部的には卵が絡んでいるが)も単為生殖と呼ぶ。他に、雌雄の分化が起こっていない生殖細胞の間に、接合胞子を形成するものの場合にも、単独で接合胞子(Zygospore)を形成する例があり、その場合には単為生殖と呼べる。そのような接合胞子を偽接合胞子(Azygospore)という。

単為生殖は偶発的なものもあれば、生活環の一部として恒常的に行われている場合もある。また、人工的に単為生殖を誘発することも行われている。

単為生殖と染色体[編集]

単為生殖は、接合なしに新個体が作られるので、雌側の遺伝子のみを受け継ぐことになる。また、接合を前提とした生殖細胞であれば、当然ながら染色体単相であり、接合によって複相になるはずである。つまり、卵がそのまま発生を行えば、他の個体は複相であるのに、単相の個体が生じることになる。普段から単為生殖を行っている生物では、そのため、卵など減数分裂で作られるべき生殖細胞を、減数分裂抜きで作っている場合や、減数分裂を起こした核が、ふたたび融合することで複相にもどる場合などがある。後者の場合、遺伝子の組み合わせの変更が行なわれているので、親と全く同じ個体にはならず、有性生殖の働きはあるが、近親交配になる。

異種間の雑種や、異数性などで染色体数が奇数になった場合に、減数分裂が行えなくなる。その場合に、減数分裂を行なわずにその細胞が発生を始めるような単為生殖が見られる場合がある。

単為生殖を含む生活環[編集]

ミジンコでは、好適条件では雌が単為生殖により雌のみをどんどん生む。これによって個体数は非常に素早く増えることができる。個体群密度が上昇すると、が生まれ、雌雄の交接から受精を経て卵が作られる。この卵は厚い殻を持ち、休眠にはいる。この卵は乾燥に耐え、新たに条件が良くなったときに孵化してくるので、耐久卵と呼ばれる。

このように、条件の良い間は単為生殖を、いわば無性生殖の方法として用い、素早く数を増やし、条件が悪化するとちゃんとした有性生殖を行って休眠にはいるというやり方は、他にもアブラムシカイガラムシなどにも見られる。

寄生虫吸虫など、中間宿主をもつものでは、幼生が無性的に数を増やす例が多い。これは、宿主から宿主への乗り代わりが必ずしも確率が高くないことへの適応とみられる。そのようなものでは、幼生が分裂などの方法で増えるものもあるが、幼生の体内に、多数の幼生が生じて数を増やす仕組みがあるものがある。この時、幼生の体内では、体が幼生のままで生殖細胞が発達して、それが単為発生的に幼生になることが知られている。このような例は多胚形成といわれる。

その他[編集]

キリスト教の聖典である新約聖書によると、救世主イエス・キリスト聖母マリアから処女懐胎によって誕生したという。他の神話などでも、単為生殖を思わせる説話がある。

詳細は「処女懐胎」を参照

歴史的な事項としては、人類が単為生殖をしたと主張する例は多数あるが、現在のところ科学的に実証された例はない。

関連項目[編集]