南海ちゃんの新しいお仕事 階段落ち人生

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南海ちゃんの新しいお仕事 階段落ち人生』(みなみちゃんのあたらしいおしごと かいだんおちじんせい)は新井素子によるSF小説。

転んでばかりの南海が「世界と人々を救う」仕事に乗り出す話。

あらすじ[編集]

大学4年生の高井南海は歩道橋の階段から転がり落ちてしまう。南海の足の骨は折れ、あたりは血の海になった。その場に居合わせた板橋徹也が救急車を呼んで、南海を病院に搬送したが、病院に付いた南海は絆創膏を貼る程度の傷しかなかった。

板橋は、この世には空間の「亀裂」があり、板橋には「赤い靄(もや)」のように見えるという。大多数の人は「亀裂」に気付かないし、「亀裂」に触れても何の影響もない。しかし、ごく稀に人に影響を与えたり、事故などを起こさせる「亀裂」も存在する。何度も交通事故が起こるような場所は、「亀裂」が原因となっていると。そして、南海が転倒するのも、その「亀裂」のためで、何故か南海は必ず「亀裂」に引っ掛かるのだ。

南海が「亀裂」に引っ掛かって転ぶと、「亀裂」が消滅することが判明する。同時に転倒によって怪我をした南海自身の身体が復元したり、壊れた物を元の状態に復元することも可能だということが判明する。

板橋は自分の会社で新設する「修復課」に南海をスカウトした。

以上、「第1章 階段落ち人生」

登場人物[編集]

高井 南海(たかい みなみ)
主人公にして語り手(新井は一人称の文体が多い)。
「粗忽姫」とあだ名されるくらいに転びまくるが、不思議と大怪我はしない。正確には人狼か吸血鬼かと疑うレベルで早く治る超能力者であることが判明する。
板橋 徹也(いたばし てつや)
40歳代の特に外見的特徴のない男性。日本有数の企業の常務でもある。街歩きばかりしているため、社内からは若年性認知症ではないかと疑われている。
「亀裂」が見える超能力者。

書籍情報[編集]

表紙画はどちらもhiko

各章
  1. 階段落ち人生
  2. 南海ちゃんの新しいお仕事
  3. 第二号案件 カップの修復
  4. 板橋さんの覚悟
  5. 第十三号案件「え……これしかないの?」
  6. 間奏曲 山下さんの事情
  7. 板橋徹也の新しいお仕事
  8. 板橋徹也の苦悩
  9. 南海ちゃんの新しい覚悟
  10. すべては、あるがままに
  11. 神ならぬ身は因果のすべてを知ることあたわず
  12. ENDING
  • あとがき
    • 単行本版あとがき
    • 文庫版あとがき
    新井素子は作品ごとにあとがきを執筆しているが、同じ作品が文庫化された際にも新たなあとがきを追加するのを常としており、本作も同様。当然ながら先に刊行された単行本には文庫版あとがきは収録されていない。

執筆の経緯[編集]

山口雅也編纂によるアンソロジー『奇想天外 21世紀版』が企画された際に、1977年の第一回奇想天外SF新人賞で佳作を受賞し、SF作家デビューを果たした新井は「絶対に書かねば」と執筆に自ら名乗りを挙げ、50枚程度の短編「階段落ち人生」を上梓した[1]。『奇想天外 21世紀版』は2017年に刊行された。

このとき、編纂者の山口は「続きがある」と指摘し、新井自身もそう思っていた。

「階段落ち人生」を第一章とし、第二章以降を角川春樹事務所のオンライン小説サイトである『Webランティエ』で連載した。

脚注[編集]

  1. 角川春樹事務所 (2023年2月). “作家・新井素子の素顔に迫る「駅の階段でつんのめって、一回転したことも」”. Book Bang -ブックバン-. 新潮社. 2025年9月12日確認。