ネロ~Noir~
『ネロ~Noir~』(ネロ~のわーる~)は、宮脇明子によるミステリー/サスペンス漫画。
『フランダースの犬』の十数年後を舞台に、ネロを死に追い込んでいった人々が次々に怪死を遂げていくミステリー、サスペンス作品である。
『ミステリーサラ』(青泉社)において、2011年3月号、4月号、6月号、7月号に連載された。同年11月には番外編「伯爵家執事の午後」が掲載されている。単行本は全1巻。
あらすじ[編集]
19世紀半ば。牛乳売りの少年・ネロと犬のパトラッシュが飢えと寒さのためにアントワープの聖母大聖堂で死んだ。
大人たちはうしろめたいこともあり、話題にすることはしなかったが、口さがない子どもたちは、あんな死に方をしたネロはきっと恨んでいるに違いない、とネロを住居から追い出した大家である靴屋のスメット、ネロが落選した展覧会で入選した画家のキーリンガー、ネロの牛乳の仕入れ先を乗っ取ったアントワープの商店主・アンソール、ネロを冷たくあしらったアロアの父であるコゼツ、見て見ぬふりをしたホーボーケン村の住人、アントワープの住人といった名を挙げ、死霊となり墓場からよみがえったネロがやってくると噂する。
十数年が経った。
靴屋のスメットが酔って川に落ち、溺死した。
アントワープ銀行の頭取にファイロ・ヨルダンスを名乗るアムステルダムの若き商人が口座を作るために紹介される。元判事の館でパーティーが開かれた夜、美術学校教諭のキーリンガーが階段から転落死する。
人々は「ネロの呪い」と噂した。
登場人物[編集]
- ファイロ・ヨルダンス
- 生き延びていたネロ、その人。神は黒く染めている。
- 本物のファイロ・ヨルダンスは伯爵家の隠し子であり、ある親父に育てられていたのだが、親父が誤って死なせてしまった。月に100フランの大金を養育費としてもらっていた親父は髪の色は違うものの年恰好の似ているネロを身代わりにし、養育費をもらい続けようと企んだのだった。やがてその親父が死ぬとネロは伯爵家に行き、今後は伯爵家とは何の関係もないと手切れ金を受け取った。
- アントワープ銀行にも出資させた輸送船を自沈させ、経済的な打撃をアントワープの街に与えることが目的だった。
- アロア
- 修道女となっている。犬をファイロが「パトラッシュ」と呼んだことから、ファイロがネロだと確信し、真相追及に動く。
- 還俗し、ネロと2人でアメリカに渡り、家庭を築いたことが4話で描かれている。ネロには先立たれたが、孫や何代目かのパトラッシュと共に暮らしている。
- アロアの推理内容や行動は「伯爵家執事の午後」で種明かしされており、その際にネロが描いたアロアの絵(展覧会落選後は筆を折ったとのこと)を見せているが、それがパブロ・ピカソのキュビスムのような絵だった。なお、当時は印象派が生まれたくらいの時代である。
- フランツ
- アンソールの息子。各方面に借金をしているドラ息子であり、父・アンソールを「ネロの呪い」として殺害をもくろむ。
- スメットが溺死したのは事故であるが、「ネロの呪い」の噂を広め、キーリンガーには阿片を混ぜた酒を飲ませていた。アンソールにもヒ素を盛っていた。
- 執事
- 伯爵家執事。ファイロの計画を止めるために、アロアと共に登場するが、それは「金の卵を産むアヒル」を殺さないためである。実際、ヨルダンスの親父に渡す養育費を伯爵には「月200フランくらいが妥当」と言って、100フランをピンハネしていた。
- 「伯爵家執事の午後」では、ぼんくらな伯爵家当主、ネロが贋者と気づかない先代伯爵夫人をいいように扱っており、聡明なアロアとネロの子供を次期伯爵に据えるのも良いかと考えている。
- ネロが描いたアロアの肖像画(上述のようにキュビズム的)は「100年経とうがヘタクソ」と断じており、昨今流行しつつある印象派(クロード・モネの『印象・日の出』を「絵具を塗りたくって赤丸をつけただけ」とお気に召さない模様。
執筆の経緯[編集]
『フランダースの犬』は、アメリカ合衆国で改変された日本版アニメを除けば、ネロとパトラッシュが死んで物語は終わる。これが納得がいかない人は少なからずいたようで、宮脇明子もその1人であった。
幼い宮脇は、「ここから物語の始まりでなければ」と考え、なかんずく犬好きでもあった宮脇はパトラッシュを生き返らせる方便をいろいろと考えた。
そして『ネロ~Noir~』のタイトルを思いついたときに「ネロによるピカレスクロマン(悪漢小説)」としてアイデアがまとまった。半ば冗談で始まったネタだからこそ、真面目なストーリーとなっている。
外部リンク[編集]
- ネロ~Noir~ - 青泉社