ダイモス問題

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ダイモス問題」とは、火星の第2衛星Deimosの日本語表記が、伝統的なラテン語読みルールに従った「デイモス」ではなく、ドイツ語読みの「ダイモス」と表記されている問題である。

ラテン語読みルール[編集]

17世紀のガリレオ以降、望遠鏡で月や惑星などが詳しく観測され、月面の地形や新たに発見された衛星などの多くは、当時の神聖ローマ帝国の公用語であるラテン語で命名された。このため、日本語でも、多くの天体名がラテン語読みやその翻訳名で呼ばれるようになり[1]、Deimosも「デイモス」 [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] と表記することがオーソドックスな方法である。

ダイモスの由来[編集]

「天文同好会」(東亜天文学会の前身、山本一清会長)が執筆した昭和3年版「天文年鑑」では、惑星の衛星名として、ラテン語読みの「フォボス」、「エウロパ」、「チタン」、「ヒペリオン」などと書いているが、火星の衛星Deimosについては、「ダイモス」と書かれている[10]が、これが大きな原因とみられる。 また、英語では、「ディーモス」、「デイモス」、「ダイモス」などと発音される。

表記の変遷[編集]

年月 表記 書籍名 執筆者 備考
1928 ダイモス 「天文年鑑」昭和3年版 天文同好会 新光社
1971.11.27 ダイモス 朝日新聞夕刊 AP通信 朝日新聞社
1971.11.27 ダイモス 読売新聞夕刊 UPI・サン 朝日新聞社
1971.11.27 ダイモス 毎日新聞夕刊 UPI 毎日新聞社
1971.12.11 デイモス 読売新聞朝刊 村山定男 読売新聞社
1976.7.20 ダイモス 読売新聞夕刊   読売新聞社
1976.9.17 ダイモス 朝日新聞朝刊   朝日新聞社
1986.7 デイモス 「天文学辞典」P.457 鈴木敬信 地人書館
1989.7.10 デイモス 「天文資料集」P.112 大脇直明他 東京大学出版
2020. ダイモス 「わくわく小惑星ずかん」P.47 吉川真監修 恒星社厚生閣
2025 デイモス 「天文年鑑」2025年版 相馬充 誠文堂新光社

脚注[編集]

  1. https://enpedia.rxy.jp/wiki/天体名のラテン語読みルール
  2. 『オックスフォード天文学辞典』 朝倉書店、初版第1刷、273頁。ISBN 4-254-15017-2
  3. 「天文年鑑」2025年版 P.214、誠文堂新光社
  4. 藤井旭の天文年鑑、誠文堂新光社
  5. 天文・宇宙の辞典 P.398、恒星社
  6. 標準衛星名表記 、宇宙用語研究会
  7. 天体名のラテン語読みルール
  8. 天体名の日本語表記のルール
  9. 「ギリシア・ローマ神話辞典」P.39
  10. 天文年鑑1928年版P.50、「天文同好会編」、新光社