ゼロ和ゲームと非ゼロ和ゲームの人生ゲーム

「ゼロ和ゲーム」と「非ゼロ和ゲーム」という視点から人生を考えるのは、社会学・経済学・倫理学的にも非常に重要である。

定義の整理

種類	定義	例
ゼロ和ゲーム	他者の得は自分の損になる／総利益はゼロ	試合、入試、政府予算の奪い合い
非ゼロ和ゲーム	互いに得をすることが可能／総利益が増える関係	協力、共創、信頼に基づく関係性

非ゼロ和ゲームの代表例（人生編）

1.教育と学び合い : 教える人も教わる人も成長できる。知識やスキルは分け合っても減らない、むしろ増幅される。ピア・ラーニング、読書会、共同研究など。

2. パートナーシップ（恋愛・結婚）

一方が得る＝一方が損する関係ではなく、信頼・支え合い・感情の共有によって、お互いが満たされる。労力と愛情を「交換」することで、1+1が3にも4にもなる関係。

3. 子育て・世代の継承

親が犠牲になるのではなく、自分の経験や価値観を次世代に伝える喜びがある。社会的には、長期的に人類の知・文化・協調を発展させる。

4. 芸術・創作・物語の共有

絵画、音楽、文章、演劇などは、創り手と受け手の双方が感動し、高揚する体験。他人の成功が「刺激」になり、自己表現の幅も広がる。

5. 信頼とコミュニティの構築

ご近所、職場、趣味仲間など、「自分だけ得をしない」関係。誰かを助けると、やがて自分も助けられる「互恵性」が働く。

6. 科学技術・知識の共有 特許や独占を除けば、知見を広めることで人類全体が恩恵を受ける。例：ワクチン開発、インターネット、オープンソースソフトウェア。

なぜ非ゼロ和ゲームは難しいのか？

• 即効性がない：努力してもすぐ報われないことが多い。
• 他者との信頼関係が必要：裏切られたり搾取されるリスク。
• 短期的には「損した気分」になりやすい。
• ゼロ和思考（勝ち負け）に慣れていると、発想が切り替えづらい。

補足：ロバート・ライトの『ノンゼロ』という視点。進化心理学者のロバート・ライトは、歴史の進化を「非ゼロ和ゲーム（協力と共創）の拡大」として捉えた。

社会、国家、宗教、科学、テクノロジーは非ゼロ和のプラットフォームであり、それらが進化していくことで人類は「より良い全体」になれる可能性があると説いている。

結論

非ゼロ和ゲームとは、「相手を蹴落とすことで勝つ」のではなく、「ともに高め合うことで全体が豊かになる」ゲーム。 人生をこうした観点から設計すると、精神的な豊かさ、創造性、社会的信頼が大きく広がる。

非ゼロ和的なキャリアの築き方

非ゼロ和キャリアとは？

定義：他人と競い合って勝つ（＝ゼロ和）ことではなく、「誰かと協力し合って価値を生み出し、その価値が自分にも返ってくる」ような働き方・生き方。

なぜ今、非ゼロ和キャリアが重要なのか？

従来型（ゼロ和）	これからの時代（非ゼロ和）
学歴や職歴で勝ち取る	コラボと信頼で機会を引き寄せる
出世競争・奪い合い	支援・共創・共感による拡張
評価：結果・スピード重視	評価：影響力・人間関係・貢献
組織の階層が重要	ネットワークと信用が重要

非ゼロ和キャリアを築くための5つの実践

1. 知識やスキルをオープンに共有する

ブログを書く、SNSで発信する、後輩を教えるなど。「教えること」は、信頼を育てる最短ルート。

2. 競争よりも“共創”の場に身を置く

勝ち負けの激しい世界（営業ノルマ、学歴レース）よりも、共に作る・育てる・育まれる環境に移動を検討する。

例：NPO、スタートアップ、研究会、共同プロジェクト。

3. 「信用」を蓄積する

実力だけでなく、誠実さ・応援・感謝で人の信頼を得る。 この「信用」は時間が経つほどレバレッジがかかる（例：推薦・協力・紹介）。

4. フィードバックを歓迎する文化を作る

自分の非を認めることは、自分の価値を下げることではない。「聞く力」「変われる力」がある人は、必ず信頼される。

5. “恩送り”を実践する

誰かから受けた恩を、別の誰かに返す。組織を越えて「善意のネットワーク」を拡張する。

非ゼロ和キャリアの代表的フィールド（例）

創作・表現 ||作品を通じた共鳴が価値になる。

分野	理由
教育	教え合う・学び合う場。知識を分け合って増やせる。
医療・介護	他者の幸せが自分の充実感につながる。
技術・開発	オープンソース、ハッカソンなど協力型文化あり。
地域・社会活動	利益より共感と連帯。多様な人との協働が生まれる。

非ゼロ和キャリアのマインドセット

• 「奪うより、増やす」
• 「一人で勝つより、みんなで伸びる」
• 「短期で測るより、長期で信頼を築く」

この視点で人生やキャリアを見つめると、ただの成功ではない、意味のある充実感が得られるはず。