ガソリンタンクトラック US6
スチュードベーカー US6 ガソリンタンクトラックは、第二次世界大戦中にアメリカの自動車メーカーであるスチュードベーカー社が製造した、US6シリーズの軍用トラックの特殊派生型である。主にソビエト連邦にレンドリース供与され、その潤滑油及び燃料補給能力により、赤軍の機動力維持に貢献した。
概要[編集]
スチュードベーカー US6は、第二次世界大戦中の連合国軍の主要な軍用車両の一つであり、特にその頑丈さと信頼性から、アメリカ、イギリス、ソビエト連邦などで広く使用された。US6シリーズには多様な派生型が存在するが、その中でも特筆すべきは、後部に燃料タンクを装備したガソリンタンクトラック型である。
このガソリンタンクトラック型は、戦線における燃料補給の要として機能した。特にソビエト連邦に大量に供与され、広大な東部戦線において、戦車や他の装甲車両、軍用車両への燃料供給を担った。その堅牢な構造と、悪路走破性から、劣悪な戦場環境下でも安定して運用することが可能であった。
開発と生産[編集]
スチュードベーカー US6シリーズは、1941年から1945年にかけて生産された。ガソリンタンクトラック型は、標準的なUS6のシャシをベースに開発され、荷台部分に特製の燃料タンクとポンプ設備が搭載された。これにより、一度に大量の燃料を輸送し、迅速に他の車両に補給する能力が付与された。
生産されたUS6の総生産台数は約20万台に上り、そのうち約15万台がレンドリース法に基づきソビエト連邦に供与された。ガソリンタンクトラック型もこの中に含まれ、ソ連軍の機甲部隊の進撃を支える重要な役割を果たした。
特徴[編集]
スチュードベーカー US6 ガソリンタンクトラックは、以下の特徴を持っていた。
- 積載量: 通常のUS6と同様に2.5トンの積載量を持ち、加えて燃料タンクに大量のガソリンを積載することができた。燃料タンクの容量は、具体的なバリエーションによって異なるが、一般的には数百ガロン(約1,000リットル以上)の燃料を搭載可能であった。
- エンジン: ハーキュレスJXD型直列6気筒ガソリンエンジンを搭載し、94hpを発揮した。これにより、十分な出力と信頼性を確保し、長距離の移動や悪路での走行を可能にした。
- 駆動方式: 6x4または6x6の駆動方式を採用しており、特に6x6型は優れた悪路走破性を提供した。ソ連の泥濘とした地形や未舗装路においても、安定した走行性能を発揮した。
- 燃料補給設備: 後部の燃料タンクには、手動または電動のポンプが装備されており、ホースを介して他の車両に燃料を供給することができた。これにより、迅速かつ効率的な補給作業が可能となった。
運用[編集]
スチュードベーカー US6 ガソリンタンクトラックは、主にソビエト連邦の赤軍によって運用された。第二次世界大戦の東部戦線では、広大な地理的条件と急速な戦線移動が特徴であり、燃料補給は機動部隊の生命線であった。US6ガソリンタンクトラックは、その堅牢性と信頼性から、過酷な状況下でも燃料を前線に供給し続けることができた。
また、その汎用性から、単なる燃料補給だけでなく、緊急時の水運搬など、多目的な運用も行われたとされる。戦後もソ連軍においてしばらく運用が続けられ、その信頼性が高く評価された。
豆知識[編集]
- スチュードベーカー US6は、ソビエト連邦兵士から「Studebaker」(スタディベーカー)または「Studer」(スタダー)という愛称で呼ばれ、その信頼性の高さから「レンドリースの奇跡」と称されることもあった。
- 東部戦線の泥濘期には、US6の6x6駆動方式が非常に重宝された。
- US6は、ソ連で開発されたBM-13カチューシャロケットランチャーの車体としても使用され、有名な多連装ロケット砲の基盤となった。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- 『第二次世界大戦の軍用車両』 デルタ出版
- 『レンドリース武器供与の全貌』 大日本絵画