カキツバタ

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カキツバタ学名: Iris laevigata)は、アヤメ科アヤメ属の植物の一種である。湿地水辺に生育する多年草で、古くからその美しい花が観賞の対象とされてきた。日本を含む東アジアが原産である。

形態[編集]

カキツバタは、高さ60cmから100cm程度に生長する。根茎は横に這い、そこから剣状のが直立して伸びる。葉は光沢のある緑色で、幅は2cmから3cm、長さは30cmから60cmになる。

花期は5月から6月頃で、茎の先端に数個の花を咲かせる。花は直径10cmから15cmほどで、青紫色が一般的であるが、園芸品種には白色や八重咲きのものもある。外花被片(萼片に相当)には、基部に白い筋状の斑紋があるのが特徴である。これはハナショウブアヤメとの識別点の一つとなる。内花被片(花弁に相当)は小さく、直立する。雄蕊は3本、雌蕊は1本で、花柱は3裂し、花弁状になる。

果実蒴果(さくか)で、熟すと裂開して種子を散布する。

生態[編集]

カキツバタは、日当たりの良い湿地や池沼水田の畔などに自生する。特に水深が浅く、常に水がある環境を好む。耐寒性があり、比較的広い範囲で生育が可能である。

分布[編集]

日本朝鮮半島中国シベリア東部にかけて広く分布する。日本では北海道から九州まで、各地の湿地に見られる。

人間との関わり[編集]

カキツバタは、その優美な姿から古くから日本庭園水辺の景観植物として利用されてきた。

文化[編集]

カキツバタは、万葉集以来、多くの和歌俳句に詠まれてきた。特に、在原業平伊勢物語における「かきつばた (古典)」の歌(唐衣きつつなれにし妻しあればはるばるきぬる旅をぞおもふ)は有名であり、カキツバタの名所として知られる愛知県知立市八橋かきつばた園は、この歌に由来するとされる。

家紋のデザインにもしばしば用いられる。また、愛知県県花に指定されている。

園芸[編集]

カキツバタは、ハナショウブアヤメと同様に、園芸植物として人気が高い。性質は丈夫で、比較的栽培しやすい。繁殖は株分けによって行われることが多い。

近縁種との識別[編集]

カキツバタは、同じアヤメ属のアヤメIris sanguinea)やハナショウブIris ensata var. ensata)と形態が似ているため、しばしば混同される。主な識別点は以下の通りである。

  • カキツバタ:湿地や水中に生育。外花被片の基部に白い筋状の斑紋がある。
  • アヤメ:乾燥した場所に生育。外花被片の基部に網目状の斑紋がある。
  • ハナショウブ:湿地や水辺に生育。外花被片の基部に黄色の筋状の斑紋がある。葉の中央に明瞭な主脈がある。

保護上の位置づけ[編集]

現在のところ、カキツバタは日本の環境省レッドリストには掲載されていない。しかし、湿地の減少や改変により、自生地が減少傾向にある地域も存在する。

関連項目[編集]