アクロマート、アポクロマート式望遠鏡

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アクロマート式望遠鏡(Achromatic telescope)[編集]

アクロマート式望遠鏡とは、色収差を低減する目的で、屈折率と分散の異なる2種類のガラスを組み合わせた色消しレンズ(アクロマートレンズ)を対物レンズとして用いる屈折望遠鏡である。

一般的には、クラウンガラス製の凸レンズとフリントガラス製の凹レンズを貼り合わせ、色ごとの屈折の違いを打ち消す構造になっている。

この方式では、光の波長によって屈折率が異なるというレンズの性質を利用し、赤色光と青色光の2つの波長をほぼ同一の焦点に結ぶよう設計されている。その結果、単レンズに比べて色収差は大幅に改善されるが、全ての波長を完全に一致させることはできないため、緑色光や紫色光はわずかに焦点がずれる。

そのため、月や惑星、明るい恒星などを高倍率で観察すると、輪郭の周囲に**紫色や青色のにじみ(残存色収差)**が現れることがある。この色収差は、特に焦点距離の短い(明るい)望遠鏡ほど目立ちやすい。

アクロマート式望遠鏡は、構造が比較的単純で調整が容易であり、製造コストが低いという大きな利点を持つ。そのため、観望用の入門機や教育用望遠鏡として広く普及している。一方で、高倍率観測や天体写真撮影では色収差が画質低下の原因となることがある。


アポクロマート式望遠鏡(Apochromatic telescope)[編集]

アポクロマート式望遠鏡は、アクロマート式望遠鏡をさらに改良し、より高度に色収差を補正することを目的とした屈折望遠鏡である。

この方式では、3つ以上の波長(通常は赤・緑・青)を同一焦点に結ぶよう設計されており、人間の目で認識できる可視光の大部分を正確に結像させることができる。

対物レンズには、3枚構成のトリプレットレンズや、2枚構成でも高性能な設計が用いられ、**EDガラス(超低分散ガラス)やフローライト(蛍石)**といった特殊な光学材料が使用されることが多い。これらの材料は分散が非常に小さいため、波長による焦点のズレを最小限に抑えることができる。

その結果、アポクロマート式望遠鏡では色収差がほとんど発生せず、像の輪郭が非常にシャープで、色のにじみがほぼ見られない。さらに、色収差だけでなく、球面収差やコマ収差などの他の収差も同時に高いレベルで補正されている場合が多い。

このような特性から、アポクロマート式望遠鏡は、惑星観測・恒星観測・天体写真撮影において非常に高く評価されている。一方で、レンズ構成が複雑で加工精度も高く求められるため、製造コストが高く、価格が高価になりやすいという欠点がある。

https://www.rp-photonics.com/apochromatic_optics.html[編集]