よみもの:音速

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音を物理的に定義し、ついでに音速を計算してみましょう。

使うもの[編集]

参考になりそうなwebページにリンクしてあります。

  • 高校レベルの数学の知識(公式をたくさん暗記する必要はない)
  • 偏微分の知識(高校数学でいう「微分」は常微分と呼ばれる) 偏微分
  • テイラー展開の知識 テイラー展開
  • 古典力学の知識 力学
  • 熱力学の基礎知識 熱力学

以上が用意できた方はこのページに沿ってやってみましょう!

「何も知らない」、「何から勉強したらいいか全くわからない」という方は、「関数って一体何者?」という問いかけから微分を勉強してみるといいと思います。

音の定義と音速の導出[編集]

図1のように、断面積がSの円柱状の領域について、この領域がある物質(弾性体)で満たされていて、この領域の側面で物質の出入りがないような状況を考える。
この領域内の物質に密度の偏りがないとき、図1の斜線部のような部分にある物質の質量をdmとおくと、この部分は体積がSdxであるから、このときのこの部分の質量密度は
ρ0=dmSdx…(1)

である。さて、図1の状況からx軸方向に物質がわずかに移動して物質に密度の偏りが出来たとき、図1の斜線部分が図2の斜線部分のように変化したとき、変化後の斜線部分の幅dxを求める。斜線部分の両端の変位を図1の状況での位置xと時刻tの関数としてu=u(x,t)と表わすと、
dx=dx+u(x+dx,t)u(x,t)

となる。ここから

dx=dx(1+u(x+dx,t)u(x,t)dx)

と式変形できる。ここで、dxが微小量だとすると、偏微分の定義から

dx=dx(1+ux)…(2)

となる。また、このとき斜線部分の質量密度はρ=dmSdx…(3) である。(3)に(2)を代入すると、

ρ=dmSdx(1+ux)…(4) となる。また、uxが位置xと時刻tの関数なので、(4)が成り立つなら質量密度ρ

ρ=ρ(x,t)…(5) と表わせる

(4)に(1)を代入して整理すると、

ρ=ρ0(1+ux)1…(6) となる。

ここで、(1+ux)1ux=0のまわりでテイラー展開すると、

(1+ux)1=1ux+(ux)22(ux)3+

となる。ここで、|ux|が1より充分小さいと仮定すると、

(1+ux)1=1ux…(7) と近似できる。(6)に(7)を代入すると、

ρ=ρ0(1ux) となる。両辺をxで偏微分すると、

ρx=ρ02ux2…(8) と表わせることがわかる。



ここで、この状況を力学的な視点で考察しよう。今扱っている物質の性質として、圧力Pが質量密度ρの関数として、P=P(ρ)と表わせると仮定すると、ここに(5)を代入すると、

P=P(ρ(x,t))と表わせることもわかる。

さて、質量がdmであるような微小部分についての運動方程式は、この微小部分の加速度が2ut2と表わせることと、図3のような力が掛かっていることから、

dm2ut2=P(ρ(x,t))SP(ρ(x+dx,t))S…(9)

とわかる。ここに(1)を代入すると、

ρ0Sdx2ut2=P(ρ(x,t))SP(ρ(x+dx,t))S

となる。よって

ρ02ut2=P(ρ(x+dx,t))P(ρ(x,t))dx

となる。さらに、

ρ02ut2=P(ρ(x+dx,t))P(ρ(x,t))ρ(x+dx,t)ρ(x,t)ρ(x+dx,t)ρ(x,t)dx

と式変形できる。ここで微分の定義より、

ρ02ut2=dPdρρx…(10)

と表わせることがわかる。(10)に(8)を代入して整理すると、

2ut2=dPdρ2ux2…(11)

となる。(11)のような形の方程式は一次元の波動方程式と呼ばれていて、この一般解は

u=f1(xdPdρt)+f2(x+dPdρt)  (ただし、f1,f2の関数形は任意)

である。これは、uは関数形が変化せずにx軸正の向きと負の向きに速さdPdρで伝わる関数の和で表せることを意味している。

これはの定義を満たしている。この波をと定義する。

空気中の音速[編集]

ここまで考えてきた「物質」が理想気体として扱えるような気体だとしたら、音の速さはどのように計算できるだろうか。熱力学を用いて考えてみよう。
その気体中の音の速さが気体中の熱伝導の速さよりも充分大きいと仮定すると、音によって気体の微小部分は断熱変化すると考えることができる。
その気体の定圧比熱をCV、定積比熱をCPとして、比熱比γ=CVCPを用いて微小部分における圧力Pと微小部分の体積Vの関係式は

PVγ=(const)…(12)

と表わせる。これは熱力学から導かれたポアソンの公式である。また、この気体の平均分子量をMとし、この微小部分に含まれる気体の物質量をnとおくと、この気体の質量密度ρ

ρ=MnV…(13) と表わせる。よって、

V=Mnρ…(14) といえる。(14)を(12)に代入して整理すると、

P=(const)(Mn)γργ…(15) となる。両辺をρで微分すると、

dPdρ=(const)(Mn)γγργ1 となる。式変形すると、

dPdρ=γρ(const)(Mn)γργ…(16) となる。(16)に(15)を代入すると、

dPdρ=γρP…(17) と表わせる。また、気体定数をRとし、この気体の温度をTとすると、この気体の状態方程式は

PV=nRT である。式変形すると

P=nRTV…(18) となる。(17)に(13)と(18)を代入すると、

dPdρ=γ(MnV)(nRTV) となる。整理すると、

dPdρ=γRTM となる。

前節でdPdρが音の速さであるとわかっているので、

dPdρ=γRTM が空気中の音の速さである。

この式に、比熱比γ=1.403(一般的な組成の空気の比熱比)、気体定数R=8.314J/(Kmol)、温度T=293K (20℃) 、分子量M=28.8g/molを代入すると、音の速さは344m/sとわかる。これは同じ条件での音速の実測値と非常に近い値である。
日常的に使いやすい音速の近似式としては、気温をtとおくと、常温(T0=293K、つまり20℃)に近い値において、

γR(T0+ΔT)M=γRT0M+12γRMT0(t20C)


=(344+0.636×(t20))m/sと表すことができる。